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作品でつむぐ札幌さんぽ ④「地方の用心棒、 ナガレさんの彫刻」

作品でつむぐ札幌さんぽ ④

地方の用心棒、 ナガレさんの彫刻



ぽんとおなかのでた愛らしい狸。春夏秋冬、にっこりと笑う雪ダルマ。または北海道の人には懐かしい、レトロなタコ型のストーブ。それらはいずれもまっ黒なミカゲ石でできた、まぎれもない彫刻作品。それぞれ〈ポンサ〉、〈八丁だるま〉、〈なんもさストーブ〉とタイトルがつけられた、札幌市内でみられる、彫刻家流政之―ナガレの作品です。
流政之は、「放浪の彫刻家」と呼ばれ、また「地方の用心棒」と自称する作家。香川県庵治にアジト(スタジオ)があって、全国各地に彫刻作品が設置されています。地方の方言や名物を造形にするのは、流さん流の地方とのかかわり方を示すもの。自分のかたちを押しつけず、地方ならではの文化を愛し、作品にして残そうとする想いでつくられたかたちなのです。
1923年長崎に生まれ、東京から京都にうつり、ゼロ戦パイロットとして従軍、その後全国を放浪、独学で彫刻を学び造形家として東京で初個展をしたのは戦後1955年でした。
ふたたび北陸を放浪、その後、香川県で石工職人らと「石匠塾」をつくり、1964年ニューヨーク世界博で制作した巨大壁画〈ストーンクレージー〉が話題になりました。作品〈受〉がニューヨーク近代美術館のパーマネントコレクションとして収蔵されており、アメリカを中心に、ナガレは世界的にも認められているのです。

さてナガレのかたち、このほかには、初期には刀や、バチの造形。空間を突き、切り裂くような反りあがる輪郭は、眼を見張らせる独特の緊張感をはらんでいます。青年期に京都で父・中川小十郎の命で古流武道を習得し、後に日本刀鍛錬所に働いたという経験が生きています。また80年代に「やっとたどり着いた」という、人型の彫刻《サキモリ》のかたち。サキモリとは、「防人」のこと。古来日本の国を守ってきた無名の兵士たちへの想いでしょうか、ゼロ戦搭乗員の体験を思い起こします。この彫刻の胴体は大きくえぐられ、風穴が開いています。何ら腹に含むことなく、無心で立つ兵士らはどこか寂しげにもみえます。そして圧巻は、要塞型の巨大なモニュメント〈雲の砦〉。1975年、ニューヨークの世界貿易センターに設置された国際的評価を得た作品で、2001年テロにあうまで、30年間ビルの谷間に構えていました。「砦」というのはみんなが集まるところを意味します。この作品はテロ後も形状をとどめていましたが、人命救助のため撤収されました。近代美術館前庭にある〈雲の砦Jr.〉は、幅5mで、〈雲の砦〉を1/2の大きさで再制作したものなのです。
このほか北海道では、東大沼に流さんが企画した流山温泉、そこに隣接した彫刻公園「ストーンクレージーの森」、奥尻島に彫刻公園「北追岬」もあって、さまざまなナガレのかたちが、これからも北海道を守りつづけていくでしょう。さてみなさん、不思議で楽しく、時に凛と屹立する、ナガレ詣でにでかけましょう。
(北海道立文学館 主任学芸員 久米淳之)
札幌ナガレ作品MAP

1

〈NANMOSAストーブ〉
1982  黒ミカゲ石  ホテルニューオータニ

2

〈PONSA〉
1986  黒ミカゲ石  狸小路商店街6丁目

3

〈キタサキモリ〉
1995〜2002  ブロンズ  アーバンサイトミュンヘン大橋

4

〈デアイバチ〉
1971  黒ミカゲ石  札幌エルプラザ

5

〈八丁ダルマ〉
1989  黒ミカゲ石  住友商事札幌フカミヤ大通ビル

6

〈北の旗〉
1979  黒ミカゲ石  北海道庁 知事室前

7

〈イッチョマエダベサ〉
1996  黒ミカゲ石  札幌イーストスクエア(※)

8

〈雲の砦Jr. 〉
2004  黒ミカゲ石  北海道立近代美術館前庭

9

〈サキモリ〉
2000〜2002  ブロンズ  北海道知事公館

10

〈テルミヌス〉
2010  黒ミカゲ石  札幌ステラプレイス/センター(屋外)

11

〈ピリカ〉
2003  黒ミカゲ石  JRタワーオフィスプラザさっぽろ1F

12

〈映画神像 北海道〉
2003  ブロンズ  札幌シネマフロンティア

13

〈キッパト〉
1997  黒ミカゲ石  札幌学院大学

14

〈なんだべ〉
2004  黒ミカゲ石  立命館慶祥中学校・高等学校

より大きな地図で ナガレ作品MAP を表示
※ フリーペーパー版「Kita:Kara」4号、当該箇所に間違えがございました。大変申し訳ございません。

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