【ガラス作家】
ニーウン・ペツガラス美術研究所
楠本ゆみさん

ワイン瓶の上部を使った「エコテトラ」で
「エコデザインアワード2007」グランプリを
受賞した楠本ゆみさん。
右下はワイン瓶の底で作りあげた「エコテトラⅡ」

元は何の飲料瓶だったか想像するのも楽しい
「エコピン」5種類組み合わせ

ガラス瓶の印字を切りとってヒュージング

　 今回、「この道具、この人」で紹介したいのは、ガラス作家の楠本ゆみさんが作るエコピンとリサイクルガラス瓶によるステンドグラス製ＨＯＵＳＥ型小箱です。どちらもhauska（ハウスカ）のオリジナル製品として作ってもらいました。
　エコピンはさまざまな色や形をしたガラスのプッシュピン。これらは炭酸水やジュース、牛乳瓶などのガラス瓶を再利用したもの。ふぞろいの形に商品名などの文字やマークがご愛嬌です。「瓶に印字されている文字がかわいいと思って。ガラスの色も生かして、印字を切りとって使ったら面白いと思ったんです」とゆみさん。ペットボトルや紙パックなどの飲料に比べ、「ガラス瓶は減ってきてなかなか集まらないので、酒屋さんに頼んでとっておいてもらっています」。
　ガラスは適度な大きさに切ったあと、天板に並べて窯で840度の熱をかけているそう。熱を加えて熔かすヒュージング（溶接）です。それで角のとれた丸みをおびた形に。「熱をかけ過ぎると印字がとんでしまうんですよ。また、ガラスとピンがしっかりとくっつくように、いろいろな接着材を試しましたね」。こうして完成したのが、このエコピンです。

　もう一品が、エコガラスをステンドグラスとして使った小箱です。ＨＯＵＳＥ型をしていて、エコガラスをモザイク状に使った三角屋根がほほえましく、手のひらサイズが愛らしい。中に何をいれようかとワクワクしてしまうほどです。
　例えば、キャンディや、ピアスやイヤリングなどの小さなアクセサリー、印鑑や鍵入れにもぴったり。エコガラスはひとつとして同じものはないので、プレゼントにも喜ばれそうです。

母でもあり、妻でもある楠本ゆみさんは、暮らしを愛おしむ
温もりが伝わる作品づくりをしている


ご夫婦ともガラス作家の楠本さんご夫妻が運営する
ニーウン・ペツガラス美術研究所

ワイン瓶を使った「エコテトラ」で高い評価

　ゆみさんは、「エコデザインアワード2007」グランプリとＳＥＣＣＯ賞をダブル受賞した「エコテトラ」の作者。この賞は2007年よりスタートしたもので、「エコテトラ」は、世界的に有名なフィンランドのリサイクルブランドＳＥＣＣＯの創設者ニーナ・パルタネンさんからも高く評価され、フィンランドのＳＥＣＣＯショップでも展示・販売されました。 　道央道北広島インターチェンジから車で約十五分の北広島市仁別。木立の中に農家をリフォームした自宅と、工房、カフェギャラリーがたたずんでいます。ここが楠本祐弘さんとゆみさんご夫婦が営むニーウン・ペツガラス美術研究所です。二人とも大阪出身で、祐弘さんがニーウン・ペツガラス美術研究所を開設したのは一九九九年のこと。廃校になった仁別小学校の建物を利用して吹きガラス工房をオープン、翌2000年に結婚し、ゆみさんもこの地へ。 　「主人の傍らで見よう見まねでガラスづくりを始めて、自分の好きなものはなんだろうと悩んでいた時に、主人が応募するので一緒に出したらと勧めてくれたんです」それが、エコテトラ誕生のきっかけに。ワイン瓶を利用してランプを作ることを思いつき、「ツノツノがでたらウニみたいで面白いなって」。十三本のワイン瓶とカッパーテープを使い、ハンダ付けをするなどステンドガラスの技法で試行錯誤の上、作りあげたのが「エコテトラ」。「ステンドグラスの奥深さに魅せられ、グランプリ受賞が私の分岐点になりました」。 　ゆみさんの作業場はお子さんのベッドが並ぶ子ども部屋の片隅。「子どもたちが寝てから、ここで夜な夜な制作しているんですよ。人に喜んでもらいたい。身近なガラスを楽しんで欲しい。それが私の作品づくりの原点です」と話すお母さんの顔がとても優しく印象的でした。