家庭にはそれぞれの「味」があります。おばあちゃんからお母さんへ、そして娘へと受け継がれた家庭の味。わが家では普通の食べものだと思っていたのに、友だちに話したら「変わってるね」といわれる味。でも、なぜかふとした時に食べたくなるあの味。そんな、家庭の味を大切に暮らす人を紹介します。











母から受け継がれた“飽きさせない手抜き料理”
「ミートソース」

　母親が大きな鍋で大量に作っていたミートソース。パスタにかけるのはもちろん、翌日の朝ごはんにはオムレツの具として入っていたり、お弁当のおかずとしてジャガイモグラタンになっていたり。　「どこで食べるミートソースよりおいしい」という母親のミートソースをお嫁に行った今も作り続けている那須瑞紀さん。「母の味に近づけるのはまだまだです」と話す那須さんのホームパーティにお邪魔しました。



ホームパーティの主役は母直伝のミートソース

　今年、待望の赤ちゃんを出産した那須瑞紀さん。この日は、産休中の那須さんを訪ねて、高校時代の親友たちが集まって来ました。「せっかく来てくれるから」と手料理でホームパーティを開くことに。お料理の主役は、母親から受け継いだ自慢の味「ミートソース」です。
　「うちは4人兄妹。仕事を持っていた母はいつも大忙しでした。だからこのミートソースをいつも大鍋で大量に作っていたんです」と那須さん。どんなに忙しくても家事は完璧にこなしていたという那須さんのお母さんは、お料理の腕前もすばらしかったとか。たっぷりの野菜とトマト缶を使ったミートソースはまずスパゲティとして夕飯の食卓に上ります。翌朝にはオムレツのなかに入っていたり、ふかしたジャガイモにかかって出てきたり。「ドリアになったこともありますね。ほかにもいっぱいアレンジ料理があったのだけど、思い出せないくらい。とにかく、ミートソースがなくなるまであらゆる料理に使うんです。それも面白いように次々と。毎日、同じものを食べているのにまったく飽きることはありませんでした」。そんな那須さんのお母さんはよく「これさえ作っておけば大丈夫」と明るく笑っていたといいます。

「普通、おふくろの味といえば、もっと和風なものが多いのかな？うちの場合は洋食ばかり。そのおかげで毎日、家に帰ってごはんを食べるのが楽しみでした」と笑う那須瑞紀さん









舌で覚えた唯一無二のレシピ
いつか真似たいおふくろの味

　「同じレシピで作っているし、何度も食べて知っているはずなのに、どうしても母の味には近づけなくて」と那須さんは苦笑いを浮かべます。「特別な料理ではないけれど、母の作るミートソースはどんなレストランで食べるのよりもおいしいって今でも思っています」。
　そんな自慢のミートソースはパーティでおもてなし料理として好評を博しています。ジャガイモにかけてオーブンで焼くアレンジ料理も。「それからもうひとつ、わが家のお袋の味といえば、コーンスープです」と那須さん。お母さんがよく作ってくれたというコーンスープは、生クリームとコーンの缶詰を使い、丁寧に裏ごししてから生のコーンをプラスします。裏ごしするひと手間を惜しまないのが家族への愛情の証し。
　ほかにも、テーブルに並んだおでんやサラダなど那須さんが作る料理のすべてが、お母さんから受け継いだ〝わが家の味〟なのです。手料理を食べながらのガールズトークは尽きることがありません。今や母となった那須さん。自分が食べて育った料理を子どもにも食べさせたいと話します。
　那須さんの〝おふくろの味〟はいつか、その胸に抱かれた小さな娘さんへと受け継がれていくことでしょう。

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